サロン専売の商品をスタッフ全員が使用

松坂さんのサロンでは、商品販売に力を入れて、年間の店頭販売を活性化。特に12月は強化月間として商品販売に注力し、5年連続で売上をUP。年商を押し上げています。
スタイリスト7人中5人は正社員(フルタイム出勤)で、12月のキャンペーン期間に1人あたり100万円を超える売上をあげているとのこと。多い人では180万円、少ない人でも70-80万円と差がでるのは、ほぼ経験年数や出勤日数によるそうです。
ベテランほど指名客が多く、信頼関係が築けていることがその基盤になっています。アシスタントにも報酬を支払うので、スタッフ全員が一丸となって店頭販売に向かう体制です。

 

Point.1
主力商品となるシャンプーとトリートメントはサロン専売

今の時代、インターネット販売されている商品は料金比較されてより低価格のインターネット購入に流れるので、サロン専売の商品を扱っています。インターネット上での評判が良い商品を選んで、芸能人など有名人が使っているといった情報をスタッフにも共有。
お客様が後日インターネットで調べても満足度が高くなります。商品開発会社の情報、洗浄成分の良さといった情報も共有しています。

Point.2
スタッフが商品のファンになることから

スタイリスト、アシスタント、パートタイマーなどの立場によらず、すべての社員・スタッフにサロンで販売する商品を使ってもらっています。自身の経験に基づいて「1日経っても毛先のまとまりの良さが違います」「毎日のセットが楽になりますよ」といったナマの声でお客様に商品をすすめられるようになるからです。
オーガニック商品なども注目されていますが、髪の状態がどう変わるかが重要で、おすすめするスタッフの実感の方がお客様には響きます。

全利益をスタッフに還元するところからステップアップ

松坂さんが事業承継したしたときの制度が、ほぼ全利益をスタッフに還元するというものだったそう。その状況を活用してスタッフのやる気を盛り上げ、スタッフにも店(経営者)にも、よりよい仕組みを創り上げています。

 

STEP.1
サロン商品売上のほぼ全利益にあたる28%をスタッフに還元

当初、多くのサロンでは商品販売の還元率を10%程度にしているところを、ほぼ全利益に相当する28%還元していました。スタイリストにとっては年末キャンペーン時など20-30万円の還元がボーナスに相当するので、やりがいを感じられます。当時の松坂さんは現場に立っていたので、率先して店頭販売を増やし、スタッフを巻き込んでいきました。

 

STEP.2
手取りは増えるが、還元率は下げる

3-4年続けて店頭販売が充実してきたところで、「現状の還元率では店(経営者)がつらい」ことを伝えて、還元率を下げたとのこと。売上が上がることで還元率が下がっても手取りは増える状況を創り上げました。普段からおすすめしている商品でリピーターも発生するようになり、年末キャンペーンは特に力が入ります。現在は店頭販売の利益の25%は店に残るように調整しているそうです。たとえば、200万円を売り上げたスタッフに還元率18%の場合、36万円の報酬。還元率は事前にスタッフに共有します。


STEP.3
お客様におすすめしたアシスタントには一律5%を還元

アシスタントがお客様に商品をおすすめして販売に繋がった場合は5%をアシスタントに還元しています。この5%は店(経営者)の負担で、スタイリストの還元率からの相殺はありません。スタイリストには指名のお客様のお買い上げとして還元が付くシステムで、アシスタントが商品販売してくれるのはスタイリストにとってもメリットでしかない状況です。
スタイリストがアシスタント教育に熱心になるほか、「さっきお客様に声をかけてたね。おすすめしたと申告しておいて」と目配りを伝えることができ、関係性がよくなります。アシスタントにとっては、スタイリストに認められたという小さな成功が自信となり、店頭販売ができている感覚が育ち、自然にチームワークも生まれます。
スタイリストが200万円を売り上げたとして、アシスタントの声掛けはそのうち70万円程度なので店の負担は5%の3.5万円ほど。アシスタントが育ち、サロンの人間関係が円滑になるので意味のある出費です。


アシスタントを含むスタッフ教育は毎朝の朝礼で

 

▶美容師の仕事はホームケアまで

アシスタントは、お客様に声を掛けにくいと感じているものです。基本的な考え方として、美容師は髪を切って終わりの仕事ではなく、次にサロンへ来るまでの1-2か月の髪の状態を保つホームケアを含めて「お客様がどう見られるのかに責任を持て」と教えています。
毎日のドライヤーの掛け方、アイロンの使い方、シャンプーする際の洗い方や流し方までアドバイスをするのが美容師の仕事です。シャンプーの仕方など、美容師にとっては当たり前のことでも、お客様は知らないことが多々あります。
商品の押し売りではなく、よりよいホームケアを伝えることを第一に意識させるようにしています。

 

▶ミニシャンプーの販売から

新規の購入を中心に、ミニシャンプーを定価の50%で販売させています。「半額で体験できるので、一度使ってみませんか?」と声掛けができます。アシスタントも、小さな商品で、しかも半額なので売りやすいと感じます。
アシスタントの誰が、お客様のどなたに販売したかはしっかり記録。次回の来店時に「いかがでしたか?」と必ず聞いて、反応がよければ本体の販売に繋げていきます。一方、リピーターにはこちらから声をかけず、年4回のキャンペーンを実施することで、お客様からの購買を促して、声掛けを効率化しています。

 

▶ロールプレイングで声掛けのタイミングを考える

松坂さんのサロンでは、教育は松坂さんが主導してきました。今ではスタイリストに浸透し、スタイリストがアシスタントに伝えています。スタイリストとアシスタントの関係性が良いので、サロンでの先輩の言動を見て学ぶことができています。
また、毎朝2人1組となり、15分くらいかけてロールプレイングを行っています。たとえば、サロンでは12種類のシャンプーを使っていて、どのシャンプーを使うのかは、お客様の髪の状態や悩みによって選びます。
カウンセリング時だけでなく、「気になっていることはありますか?」とお客様のお悩みを聞くタイミングです。スタッフは、使用するシャンプーについての説明責任も負います。お客様のお悩みを改善することが、一番の満足にも繋がるので、カットの最後にシャンプーの効果を伝えて、お客様から「このシャンプー、買えるの?」と言っていただけるように声掛けの仕方を工夫します。
季節や髪の状態で別のシャンプーをすすめて、飽きさせないことも大切です。サロントリートメントへの誘導を絡めて、サロンケアとホームケアを定着させることで、お客様との関係性を強固にしています。どのタイミングでお客様の悩みを聞き出し、どのタイミングで何を伝えるのかを考えるのがロールプレイングの時間です。

 

 

松坂さんのスタンス

松坂さんは事業承継から4年目の去年、現場を離れたそうです。お客様のお悩み解決とプロフェッショナルとしての説明責任、店頭販売など、何事も実践して見せることが第一。同じベクトルで考えられる責任者の育成を段階的に進めてきました。

成功のその他のポイントとしては次の3点があります。

●サロンの目標設定、個人の目標設定、毎日の報告、目標までの数字進捗、盛り上げてくれているスタッフを毎日見つけてほめる、動きが悪そうなところは時間を作ってまずは一歩から始めさせるなど、細かくイメージして取り組んだ。

●キャンペーン途中でも、数字に合わせて新しいことを始めた。サイズアップ、もう一つ予約、アウトバス付けたらなどに対してプレゼントを付けるなど。

●迷っているお客様には店長決済で、特別サービスするなど多少柔軟に対応(内密に)。
はっぱをかける人がいなくなって夏のキャンペーンは奮わなかったそうですが、「冬のキャンペーンは目標達成すると思う」と、松坂さんは言います。その根拠は、現場の責任者がキャンペーン内容を考え、どう進めるのかを聞いているからとのこと。
利益率の計算は松坂さんがしていますが、キャンペーンの内容やスタッフの巻き込み方は責任者にゆだねています。責任者からは、今後「頭皮ケア」に力を入れていきたいという報告を受け、炭酸シャンプーと頭皮用トリートメント8000円という、これまでにない高額の商品セットにもOKを出したとのことです。
スタッフの感情と仕組みを一致させることが、松坂さんの経営の極意だと理解できる話をしていただきました。


▶Profile

松坂 芳季(マツザカ ヨシキ)

1987年、長野県生まれ。他社で修業の後、2016年より初代・父親の立ち上げたサロン「ヘア&メイクSawa上田本店」に入社。2019年に承継。入社時の1店舗7名から、現在3店舗、アルバイト・パートなど含めて35名に拡大している。
2年前に「ルシードスタイルSawa」を始めて、ルシード店が半年で税込み1000万円、1年半で税抜き1350万円の売上を達成。年商、年間店販売上、12月店販売上、5年連続増加。

 

▶企業データ(2023.10現在)

店舗数:3店舗
社員数:35名(男女比:男性15名/女性20名 年齢分布:10代4名/20代13名/30代5名/40代2名/50代1名)

 

関連インタビュー(2022年02月)

長野市のSawaグループで上田本店を承継

スタッフの満足度を上げることで売上を年々増加

三兄弟で組織を固め、毎年、新人獲得に成功