1971年4月6日、宮崎県生まれ。福岡大学卒業後、大手居酒屋チェーンのテンアライド㈱入社。東京都内の数店舗を管轄するマネージャーとしてチェーンオペレーションを学ぶ。3年勤務後、SPC幹部の親族が経営する料理屋へ転職。2000年、結婚。2002年、美容室経営に転じ、義母が経営するベルファミリー入社。2004年SPC入会。入会当時は1店舗、スタッフ7名だったサロンを11店舗90名に拡大し、成長を続けている。取締役社長を経て5年前に、代表取締役社長に就任。
理美容業界未経験。
元・飲食店マネージャーから経営者へ
大手居酒屋チェーンで複数店舗を管轄するマネージャーとして3年勤務し料理屋への転職を経た後、ベルファミリーの創業者・鈴木次子さんの長女と結婚。その後、当時パートとして働いていたサロンをオーナーから譲り受けたという次子さんから「一緒に多店舗化していかないか」との誘いを受け2002年より入社、美容室経営に参画した。
「パートで入った次子さんがサロンを譲り受け、もともとサロンオーナーと関わりのあった私が経営に携わることに深いご縁を感じました」
こうして心機一転、異業種からの挑戦が始まった。
会員サロンはフリーパスポート状態!?
様々な見学体験が一番の勉強だった
ベルファミリーへ入社直後は苦悩と葛藤が続いた。それまで家族とスタッフでやってきたサロンに突如、美容師免許を持たない未経験者が入り「多店舗化しましょう」と奮闘しても、反発は否めず現実は甘くなかった。知りたいことは山ほどあるが経営について質問できる相手はおらず、チェーンオペレーションの知識では歯が立たない。相談できる環境がないまま2年が過ぎ切羽詰まっていた折に、オーナーの次子さんに促され、一念発起してSPCへの入会を決めた。
「実際に入会してみると、外から見ていた印象とはまるで違いました。不毛な2年間を経たからこそ、何でも教えてくれる風土と先輩経営者たちの親身なあたたかさが本当にありがたかったです」
特に印象的だったのは「入会したらフリーパスポートをもらったのと同じ。全国の会員サロンどこでも勉強しに行くといいよ」この言葉に背中を押され様々なサロンへ足を運んだ。そして経営者の視点、仲間との情報共有、意識を変える習慣や組織作りなどを学び、ようやく解決の糸口が見えた。「SPCは太鼓のようなもの。大きく叩けば大きく返ってくるし、叩かなければ一切音は出ない。だからどんどん叩いた方がいい」というアドバイスは今でも問題解決のための原動力になっている。
“経営者交流”が変えた意識
後輩への協力は理美容業界への投資
経営について学ぶなかでもっとも有益だったのは、見学へうかがうサロンのほとんどが惜しみなく自店の情報を共有してくれたことだ。たとえば飲食業界ではお店の命である“秘伝のタレ”のレシピは口外無用だが、先輩経営者たちは事務所の内部や数字まで詳細に見せてくれる。あまりに気前がいいので質問したところ、こんな答えが返ってきた。「これが理念だから。経営や技術を教えるだけじゃなく、人として信頼関係を築くことが大事。自分も先輩に助けられて今がある。だから、あなたが将来同じ立場になったとき必ず後輩に協力してあげてください」美容室ならではの体温を感じる経営者のあり方に胸を打たれ、ようやく未経験からはじめた“美容室経営”の進むべき道がひらけた。
仲間への協力を惜しまないこの理念を受け継ぎ、先輩から受けた学びと恩恵を次は自ら後輩へと伝授していくことが理美容業界への投資、ひいては恩返しになる。単純にハウツーを知るだけなら、どこにでも情報が溢れている現代。熱意を持って意見を交わし、アイデアやノウハウを共有するなど、人と人とがつながり合い受け継がれる業界繁栄への好循環を生み出せることが“経営者交流”の醍醐味だ。
現在は、新卒からママさんパートまで働きやすさとやりがいを尊重し多様な雇用形態を設定することで時代とマッチ。“人”を大切にする経営方針を掲げ会社を急成長させている。
『効率』よりも『人財』が最優先。
本質への気づきがターニングポイント
チェーンストアでの経験から、スピードや効率ばかりを重視した考えに囚われがちだったが、『人財』を大切にすることが、美容室経営の本質であると気がついたときにターニングポイントが訪れた。
スタッフが働きやすい環境を整えるため、多様な勤務形態を取り入れ、約半数はパートを採用。スタッフのやりがいを尊重することが現場でのより良い接客や技術の提供へつながり、結果お客様の再来店が増えるようになった。経営者として“人との向き合い方”を見直したことにより、視点を転換できたことが大きな分岐点となった。
スタッフの約5割がママさんスタイリスト。
多様な働き方を選べる取り組み
ベルファミリーでは、パートをタイムスタイリストと呼び、ライフスタイルの変化に合わせて段階的にステップアップできる働き方を設定。出産後も無理なく社会復帰できるうえ、再度正社員を目指せる制度により、産休復帰後のスタッフが現在も長く美容師として活躍している。
いきいきと働くその姿を見た若手スタッフが“結婚して子どもができても活躍できる”と希望をもつことができ、やがて出産した際に戻ってきてくれるというポジティブなサイクルを生み出している。
今でこそ多いパート採用だが、雇用形態を一新した当時は画期的であり、妊娠を期に他社を退職したスタイリストが続々と入社。
新卒は10人に1人しか残らないのに対し、ずっと働き続けるパートにスポットを当て、週1勤務から時短勤務まで多様な働き方を可能にしたことで、充分なスタッフ数を確保。発想の転換が見事に功を奏した。
重要なポイントは、タイムスタイリストと社員の割合を1:1とする点だ。お互いを尊重し合えるよう若手スタッフには「一人前の美容師になるには、タイムスタイリストにかわいがられなさい」と指導、幹部社員には「完全週休2日で安心して休めるのは、タイムスタイリストが売上を守り続けているおかげ」と伝え、タイムスタイリストには「自由な形態で働けるのは、社員がいるから成り立っている。リーダーの言うことはよく聞いて、新人はかわいがってあげて」と、三者の立場を考慮した働きかけを行い、それぞれに助け合えるチームワークを実現している。
年齢や雇用形態の違うスタッフが調和し合ってつくるのは、働きやすいサロン環境そのもの。こうした取り組みによってタイムスタイリストの定着率は100%を維持している。
年に1回の個人面談を実施。
社長と対話することで信頼関係を築く。
『人財』を大切にする経営理念の一環として、もっとも大事にしているのが鈴木会長と上田社長が直々に行う面談。
年に1回、1月から3月にかけてタイムスタイリスト、若手スタッフ、幹部社員へ実施している。
働くうえでの希望やキャリアプランの相談、家庭の状況などどんな声にも耳を傾ける。不満や要望を直接聞いてあげることが働きやすい環境づくりへと役立ち、スタッフの不安が和らいで信頼感が生まれるのだという。
10年以上続けるうち、スタッフ一人ひとりと向き合い対話することが長く働いてくれる信頼へつながっていると実感している。
※現在は『Zoom』を使用しオンラインにて実施
INTERVIEW DATA
- 代表
- 上田 秀文
- 創業
- 1998年4月1日
- 店舗数
- 13店舗
- スタッフ数
- 90名
- 本社所在地
- 埼玉県狭山市富士見1-1-7 丸喜ビル4F
- 取材店舗名
- PRIMO狭山店
- 店舗所在地
- 埼玉県狭山市入間川1-3-2スカイテラス狭山202 A号