1964年5月29日、茨城県生まれ。美容専門学校を卒業後、水戸のヘアサロンに就職。19歳で上京し1994年当時勤務していたサロンを買い取り独立。2000年7月に『株式会社アイス』を設立、本社所在地でもある赤羽を拠点とし、2005年に開業した『wisp』を皮切りに現在都内にて『VAN COUNCIL』『beep』『BARBER-BAR』『Furisode Flower』の4ブランドを運営している。
予想外の機会に恵まれ、サロン経営者に
美容専門学校を卒業後、地元のヘアサロンに就職。その後19歳で上京。
様々な場所で経験を積むなか、当時勤務していたサロン店長の紹介のもと赤羽のサロンへ転職。
以降自身の拠点を赤羽とし、1994年に同サロンを買い取り独立、2000年に㈱アイスを設立し、2005年に『wisp赤羽』を開業した。
「もともとファッションや音楽などクリエイティブな分野への強い興味とこだわりがありましたので、“自分なりのヘアスタイルを表現したい”という想いから美容業界へ足を踏み入れました。当時は“経営者”になることは考えていなかったですね」
その後、赤羽にて5店舗を運営、1店舗あたり約500万円ほどの売上を立てるなど、秘められていた経営者としての手腕を発揮していく。
『組織をもっとメジャーにしたい』50歳からの使命とビジョン
美容師として活躍し始めた18歳頃からSPC会員サロンに勤務、オーナーや先輩経営者の好意で大手理容グループの研修に参加させてもらうなど、SPCとは長く関わりを持っていたという山口代表だが、意外にも入会したのは50歳を過ぎてからだという。
「40歳頃に、同業の友人から横山創設理事の勉強会に誘われたことがきっかけで室長と知り合いました。鋭い洞察力と哲学的思考で物事を見抜くセンスを持っていて、ひとりの人間としても惹かれるところがあったので、それから十数年、組織というより室長に師事していましたね。50歳頃に初めて入会のお誘いをいただいたので、室長が設立したSPCで恩返しをしたいという想いから現在に至ります」
業界の未来に向け、自ら道を切り拓いてきた“経営者”として持ちうる使命と役割とは何か。
組織の固定されたイメージの一新を図るべく、ビジュアルデザインに力を入れながら若者への訴求力を高めるなど、経営学だけでなく「センスも磨ける団体」を目指している。
“組織をもっとメジャーにしたい”“経営者仲間とさらに新しい価値を創造したい”そんなビジョンを持ちながら現在も活動を続ける。
業界特有の苦労や体験を共有し合える貴重な場所
㈱アイスでは『BARBER-BAR赤羽』『VAN COUNCIL王子/川口』のSPCブランドを運営。
そのメリットは情報力と、1人ではできないことをみんなで実現できる体験の“共有”にあるという。
「『BARBER-BAR』はメンズサロンを手掛けたいと構想していたスタッフと趣旨が合致したことで始めました。1人でイチから出店するより、協力し合って創り上げていく体験が今後のスタッフにとって大きな糧になると思っています。『VAN COUNCIL』を2店舗展開しているのは協力し合いながら同時に競うかたちにした方がより成長と成果を得られるとの考えからです」
豊富な前例と情報をもとに、新しい挑戦体験も共有できる組織の環境にデメリットは見当たらないと話した。
また、入会して感じたことといえば“仲間のあたたかみ”だ。全国の同業経営者たちと仕事を通じて交流を図れることは何よりの励みになる。
「プライベートな友人の他に、業種特有の悩みや苦労を理解し共有してくれる仲間がいることは大変貴重に思います。私たちの根底には“一人の仲間を労(いたわ)ることをすべてとして”という理念があるのですが、先輩経営者からはよく声をかけていただき多大なお気遣いをいただいています。こうして現在トップの経営者たちが“人間力”や“仲間力”を後輩とともに育み循環することで、次の世代にも脈々と受け継がれていくと考えています」
互いを気にかけ合いながらときには酒席で想いを酌み交わすなど、数字を追うだけでは足りない自己研鑽を積める貴重な場がここにはあるのだ。
挑戦の末『利益の追求』から『スタッフファースト』へ転換したことがターニングポイント
30歳当時、北海道の有名サロンが設備など一部スペースを貸し出す美容師への業務委託が可能なサロンを銀座にオープン。
そのノウハウを知人から教わったことがきっかけとなり、いわゆる“面貸し”の契約形態を自店に取り入れたことで爆発的に集客がアップ。これまでの“教育型”から“集客型”へとサロンの方針転換を図ったことで会社は軌道に乗り始めた。
無駄のない効率的な時間活用とフリーランスに慣れた能力のある美容師が活躍することで、初月から新規客約300人を獲得し、カットカラー4,720円という低単価でありながら約600万円を売り上げた。
その後、王子に2店舗、大宮、池袋、高田馬場、新宿と立て続けに出店。
しかし順調ながらも自身の展望とのズレを感じ、利益を追うよりも思い入れのあるスタッフとともに成長していきたいとの想いから、さらに方針の立て直しを図った。
「やはりお金じゃないと実感しました。面貸し自体は継続していますが、せっかくなら自分のもとで育ったスタッフへ還元したいですね。この選択が今思うと大きなターニングポイントになったと思います」
振袖・袴レンタルの『Furisode Flower』をオープン!
『beep』は現在息子である大夢さんが運営。今後の動向は任せ、ゆくゆくは多店舗展開を構想している。
そんななか、山口代表は新しい挑戦として振袖・袴レンタルの『Furisode Flower』を出店した。
「これまでも着付けメニューを展開していたことと、自分が日本舞踊をたしなんでいて着物に触れる機会が多いこと、そして家内が好きなこともあり、老後のチャレンジとして『Furisode Flower』を始めました。出店にあたり、関西ではレンタル事業をされている会員さんも多く心強いというのもありましたね。何より、ステップアップすることで新しい自分に出会えることが人生の喜びだと経験上感じてきましたので、息子にその姿を見せておきたいという想いがあります」
夫婦で互いに地方から上京、時流を掴んで常に一歩先へリードし続け、今では洗練されたサロンクオリティを提供、発信し続ける㈱アイス。
何も知らないところから会社は創れる、誰でもチャレンジすれば形にできる、忙しい日々でも好きな仕事に出会えたから苦ではなかったという山口代表。
これから美容業界を志す若者や現在ともに闘う同志へ、挑戦し続けることの価値を自社を通して伝えることができればと語った。
『ヘアサロン』と『アート』の可能性
運営する店舗に共通して感じるのは、山口代表の特徴でもある“クリエイティビティ”だ。
『VAN COUNCIL』では内外装にアート作品を取り入れるなど、独創的な試みが伺える。
「既存の概念にとらわれない独自性を演出していきたいと常に考えています。経営学や人間力も大切ですが、“あのサロンで働いている美容師さんみんなかっこいい”と憧れられるような洗練されたセンスが加われば、裾野はもっと広がると思います」
山口代表をはじめ、スタッフのファッションセンスにも定評がある背景には、美容師を志した16歳当初から、自身が常にかっこよく在ること、好きな職業で自由に表現することという変わらない本質がある。
その姿は今もなお、スタッフに影響を与え続けている。組織やヘアサロンに『アート』というアプローチを用い、ビジュアルデザインの見地から牽引する㈱アイスの未来にますます期待が膨らむばかりだ。
INTERVIEW DATA
- 代表
- 山口 敏之
- 創業
- 2000年7月1日
- 店舗数
- 7店舗
- スタッフ数
- 40名
- 本社所在地
- 東京都北区赤羽西1-38-18 アドレシア206
- 取材店舗名
- VAN COUNCIL 王子 / VAN COUNCIL 川口
- 店舗所在地
- 東京都北区王子3-13-13